2018.10.01

伊藤雅一ギターリサイタル

数十年ぶりの帰国リサイタルとなる伊藤雅一さんのコンサートを聴きました。
彼は高校のクラブの後輩なのですが、演奏をちゃんと聴くのは第28回の東京国際ギターコンクールで2位になって以来かもしれません。懐かしさとともに、長いアメリカ生活を経てどんなギタリストになっているのか、大きな期待とちょっとした不安が入り混じった気持ちで出かけました。

最初に弾かれたピポーの歌と踊りで、すぐに不安は杞憂であることがわかります。和音による伴奏に乱されることなくメロディがを大切に歌われる演奏に、一流演奏家のみが聴かせてくれる音楽を感じました。踊りも鮮やかな弾きっぷりです。
大序曲は彼が高校の時から得意としていた曲。後で聞いたらやはりクラブの旧友を意識した選曲だったとのこと。粋な計らいです。しかし、当然のことながら当時とは違う巨匠の演奏で、自在に緩急をつけながら素晴らしい音色で聴かせてくれました。
次の2曲はトゥリーナとデ・ラ・マーサ。このあたりは手塚健旨さんやホセ・ルイス・ゴンザレスに師事した経験が効いているいるのでしょうか、スペインの香り豊かな演奏です。
そして、ブローウェルのジャンゴ・ラインハルトの主題による変奏曲。これは相当難易度が高い曲のはずですがやはり鮮やか。前半最後を飾るのにふさわしいスリリングな演奏でした。

後半はギターアンサンブルをバックにビバルディの協奏曲から。ギターにとってはポピュラーな協奏曲ながら、アンサンブルをリードしながら各所にバロックらしいいきなバリエーションが加えられ、新鮮に聴くことができました。
そしてバリオス。大聖堂、最後のトレモロ、ワルツ4番という定番ながら難易度が高い曲の連続でしたが、それぞれテクニックの切れ、ダイナミクス、音の美しさと申し分のない演奏で、楽しく聴くことができました。
アンコールはグラン・ホタ。音楽的な楽しみというより、ギターテクニックの多彩さを伝える曲だと思うので、本プログラムよりはアンコールにこそふさわしく、華麗なるテクニックを持つ彼のコンサートを締めくくるのにぴったりでした。

これほどのテクニックと音楽性を合わせ持つ日本人プレイヤーは、下の世代には鈴木大介さんや大萩泰司さんなど何人もいるように思うのですが、50代では以外と少ないのではと思います。そういう点でも同世代の星として応援して行きたいと思いました。

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2018.09.19

ハビエル・コントレラス東京公演

いやー、すごい人を見てしまった。南米はギタリストの宝庫ですね。

前半は、日本のギタリストがハピエルさんの曲と自分のレパートリーを披露するセクション。ハピエルさんの曲も良かったのですが、若手ギタリストのガラコンサートのようで、ちょうど聴いてみたかった実力派の皆さんの演奏に接することができたのが収穫でした。その中で熊谷さんだけは何度か演奏に接していて、曲に対する丁寧なアプローチと豊富な経験からか、音楽に深みが出てきていると感じました。

後半はハピエルさんの独奏を堪能しました。とんでもないスピードでパッセージを弾いているのにまったく破綻がなく、細かいパッセージの中から大きな歌が聞こえてきます。曲はすべてオリジナルで、ジャズっぽい和声も交えたブラジル的な洗練された音楽はアサドやジスモンチに通じるように感じました。


終演後、CD買ってサインしていただきました。すごくお若くて話し方も優しい感じで好感が持てました。これからの活躍が大いに期待できると思います。
誘っていただいたアルトフィールドの高田さんに感謝です。

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2018.06.29

福田進一&大萩康司 ギターデュオ・リサイタル

調布国際音楽祭の中で行われた「平野啓一郎 をゲストに迎えて」という副題がついた標記コンサートに行きました。
このコンサートは、平野啓一郎さんの「マチネの終わりに」に描かれている楽曲を中心に演奏される特別な企画です。

前半は、デュオでバッハとテデスコの平均律です。エグゼクティブプロデュサーの鈴木 優人さんへのオマージュとしてバッハから始めて、近代のテデスコに持ってくるという粋なプログラミングです。
続いて大萩さんのソロ。大萩さんの音は美しく表現も端正で好きです。聴き慣れた大聖堂も、2楽章の適切な繰り返しや3楽章の少し凝ったバージョンで楽しく聴けました。
前半最後は、再びデュオでソルの幻想曲。前半の最後を飾るのに相応しい選曲と華やかな演奏で盛り上がりました。

後半はトークセッションからスタート。皆さんの交友、さらには小説とギター音楽の関わりについてのお話もあり、このおかげで、それまでの演奏もその後の演奏も一層味わい深く感じられたように思います。もっと話を聞きたいとも思いましたが、コンサートの一部としたらこれぐらいが適切ですね。

そして、御大登場。バッハチェロ3はD調弦のト長調編曲で、低音の追加や装飾、旋律中に入れられる適切なアクセントとフレージングがギターならではの様式感を感じさせる演奏で、全曲聴きたくなりました。どこかで見かけたらCD買お。
その後の2曲も美しくかつギターの鳴らし切り方が見事です。
最後に再びデュオで、ピアソラのタンゴ組曲から2、3とアランフェス2楽章の2重奏版。
タンゴ組曲はスリリングさが半端ない感じ。ライブらしい演奏でした。そして、最後のアランフェスは、なんとオーケストラ部分をも再現する省略なしの完全版!カデンツァは交互に弾きながら、最後は2人でかき鳴らす圧巻の演奏。オーケストラとのバランスが気にならないので細かいニュアンスも良く聴き取れ、もしかしたらこれまで聴いた中で一番楽しめたんじゃないかと思いました。これは持ちネタになるんじゃないでしょうか。

終演後、本買ってサインの列に並びました。(実はまだ読んでなかったという。。)
皆さんお疲れのはずなのににこやかに対応されていて、周囲には鈴木優人さんも撮影に応じてらっしゃるし、フェスティバルならではの素晴らしい光景でした。
福田さんが私を見て「(この演奏会にはあまり居ないはずの)ギター知ってる人がいた」とおっしゃっていたように、ギター音楽が一般に広がっていくことが感じられ、ギターファンとして、色々な意味で嬉しい企画を催した調布国際音楽祭と「マチネの終わりに」を書いた平野さんに感謝しています。

<追記>楽屋裏の逸話。おもしろ意地悪な福田さん。



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2018.06.10

山下和仁ギターリサイタル『ゴヤの絵による24のカプリチョス』全曲演奏会

さて、待望の山下和仁を観戦しました。
山下はやや下手に座り、正面にはゴヤの絵をスクリーンに写しながらの演奏は、総合芸術的で良い趣向です。

最近、Zoran Dukicなどの、この曲の端正な演奏を聴き過ぎていたせいか、思いのほか鳴りきらない音があったように感じられましたが、これでもかというほどギターを鳴らし切り、スピード感豊かな怒濤の演奏は健在で、端正な演奏とは対極にあってこそ山下です。
ライブならではの魂を込めて前半、後半それぞれ一気に弾ききる緊張感の高いスタイルは、かつての「展覧会の絵」全曲演奏を思い出させます。そう、この曲集は正にテデスコ版「展覧会の絵」なんだと気づきました。

最近、東京での演奏会も増えてきましたので、これからも、山下さんの演奏は聴き逃さないようにしなくてはと思います。

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2018.05.26

okapi&ズンクマイナン 日独交流アコースティックコンサート

もう数日前のことですが、しばらくぶりのライブ観戦しました。
今回はYouTubeで見かけてからずっと気になっていたズンク・マイナンokapiさんというギタリストが招聘したジョイントライブで見ることができました。

マイナンはオリジナルやアレンジを弾くアコギ系の芸風なのですが、これをナイロン弦のギターでやってのけます。ただし、よく見ると、ボディヒットはそこそこ使うものの6弦を下げる以外は変則チューニングも使わず、弾弦テクニックもクラシックのそれで、もの凄いテクニシャンであることがわかります。

アレンジものは、チュニジアの夜、ロング・アンド・ワインディング・ロードなど、選曲のセンスが良く、さらにどれも原曲の良さを生かしながら、テクニックを生かしたスリリングな編曲でした。
オリジナルも素晴らしく、楽曲がしっかりとした多声の構成を考えて作られているようで、聞き応えのあるものばかりでした。

okapiさんという方も押尾コータロ―並みの凄い弾き手で、胡弓、ピアノ、チェロ、三味線と多彩な共演者と楽しいステージを聴かせてくれました。
実はこのに気づいた時には満席で、ダメ元でキャンセル待ちにエントリーしていたところ、何と前日にokapiさん本人から連絡をいただきました。素晴らしいギタリストを招聘しただけでなく、丁寧にご連絡いただいたokapiさんに感謝です。

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2018.04.14

林正樹 × 大柴拓 初デュオ

1512172356355.jpg しばらくライブを聴いてないと行きたい病が出てきます。仕事が一段落したので、当日思い立って少し前からツイッターに流れて気になっていたデュオのエル・チョクロでのライブにうかがうことにしました。
大柴さんは以前聴いたことがありますが、凄いテクニシャンであることを再認識しました。特にアドリブでこれだけキレの良いパッセージがキメられる指弾きのギタリストってちょっと見たことがないです。林さんのピアノも優しい響きの中にリズミックにアウトしていくフレーズが入ってグッと来ます。
ギターとピアノの組み合わせは通常は音量と響きのバランスを取るのが難しいと思うのですが、美しく耳馴染みの良いメロディと広がりのあるハーモニーのあるオリジナル曲と、独奏できる楽器の持つ自由度を最大限に生かした面白い音楽を聴かせてくれました。
7月にもこのデュオのライブがあるそうなので、こういう音楽ももっと多くの人に聴いてほしいなあと思います。

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2018.02.11

ファン・ファルー ギターリサイタル

Juanfalu最近活動自粛ぎみにしていますが、せっかく大物がやってくるイーストエンドギターフェスティバルに1つぐらい行かなきゃ損と思い、久しぶりにコンサートに出かけました。
今回は迷った末に、まだ聴いたことがないファン・ファルーを聴くことにしました。

1曲ずつ解説しながら進めるスタイルで、リラックスして聴くことができます。フォルクローレのリズムがいつもゆったりと流れている上で、ギターの音が暖かく歌う感じです。アルフォンシーナは知っている曲なのでわかりましたが、ジャズとはまったく違う語法でインプロバイズして弾かれているようでしたが、それも自然で美しい。
そして歌になると、アルゼンチンの生きる国宝と言われる意味がさらによくわかってきます。スペイン語なのでニュアンスはフラメンコのカンテに似てるんだけど、適度な湿度がある。でも演歌ほどではなく、適度な暖かさが感じられました。

このフェスティバルではいつも、クラシックではないギタリストの演奏は、自分がギタ-を弾く上で忘れがちになることを思い出させてくれます。
いつもながら良いコンサートを企画していただいている主催の樋浦さんに感謝です。

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2017.12.03

第60回東京国際ギターコンクール

今年も東京国際ギターコンクールに行ってまいりました。あまりにもドラマチックな内容でした。演奏順に観戦記を書いてみます。

1.Anton Baranov(Russia)
王道クラシックの演奏だけど、曲がちょっとつまんない。私は3位でも良かったのではと思いましたけど。

2.菅沼 聖隆
ホセのソナタは絶品でした。今日のプログラムの中では一番好きだったかも。テクニックはワールドクラスなので、これからが楽しみです。

3.Zhanxiang shi(China)
ポンセのフォリアを集中して全曲弾ききり、最近活躍が著しい中国パワーを感じさせました。ただ音楽が若すぎる。まだ10代、これからに期待。

4.Flavio Nati(Italy)
選曲のせいか音楽がちょっと内向きに感じられました。古典・ロマン派枠をもう少し責めた曲を選んでも良かったように思います。

5.小暮浩史
アゴーギクをうまく使った落ち着いたフレージングとセンスの良い繰り返しの装飾が美しかったスカルラッティ、レゴンディでの複雑なパッセージの中に聴こえる粋な歌い回しなどフランス留学の成果が感じられました。師匠譲りのダンジェロも好演。これまでで一番良い演奏でした。

6.Gian Marco Ciampa (Italy)
小暮さんついにやったかと思いながら迎えたラストバッターが怪物でした。美しい音と緻密なテクニック。おそらくダブルトップと思われる爆音系ギターを最大限生かしたダイナミックレンジの広さ。

弾き終わった時、やばいと思いましたが、冷静に考えると、各年代の曲はそれぞれ互角と思われ、課題曲は澄んだ響きと歌に和の心が感じられた小暮さんと映画音楽のように歌い上げたMarcoさん、これは審査員好みで決まると思われました。
そして結果はこちら。


点数表をみると僅差で、間違ってないか電卓出して計算したぐらい。後から考えると、小暮さんは音楽をすべての観客に届けようとするステージングだった。これが結果に現れたのかもと思います。それと、多くの参加者が爆音系ギターを使うのに対して、伝統的工法と思われるギターを使って立ち向かっていたのもサムライを感じ、好印象でした。
今から来年の優勝者コンサートが楽しみです。

一晩明けましたが、まだ興奮冷めやらぬので、もう少し追記します。
点数表のとおり、上位2人の審査員の評価は3対3で分かれています。しかも2位につけたのはすべてギタリストで、さらにギタリストで唯一1位をつけてくれた小原さんの点数はルールにより除外。しかし、一方で2位でも全体の点数が高い、つまり多くの審査視点からの評価が相対的に高ければ、上位になるという、なかなかよくできたルールでもあります。
きっとギターの神様にその場にいた多くの人の気持ちが届いたのかなあなどと思うと、今でも胸が熱くなります。

さらに追記。福田さんのツイートが一言で表しています。さすが巨匠!

まだまだ追記。
彼の師匠である高田元太郎さんが、入門からの経過など祝辞とともに書いています

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2017.12.02

山下和仁ギターリサイタル

1512172356355.jpg 実にリサイタルとしては7年ぶりに、音を聴くのは菅原さんの追悼コンサート以来の山下和仁ギターリサイタルに行きました。思えは、前回は私も(たぶん)40代でしたので、今回は50代の山下を目撃すべく紀尾井ホ-ルに行ってまいりました。
一番安い左側の二階席を買いましたが、さすが山下、良く聞こえます。肝心の演奏は、相変わらずの山下節炸裂で、ダイナミクスの幅が極めて大きく、しかも自然と膨らんで行くように変化するところが、心を揺さぶるのかななんて思いながら聴きました。
時にメタリックなほどの音色の変化とともに他のギタリストのそれと明らかに異なる山下さんの特長なんだなあと改めて感じました。

2重泰ではシェエラザードが凄かったのは多くの方が思うとおりだとして、私はビバルディが気に入りました。最初はちょっと高音寄りの和音が多く軽めな印象でしたが、父山下の和音の流し方やトリルが美しく、感傷的なメロディと相まって娘さんの小ぶりなギターにも良く合った好編曲で、楽譜が出ないかななんて思っちゃいました。

息子さんの曲は正直掴み所がない印象でしたが、こういうコンテンポラリーな曲を後半の1曲目あたりに入れるのもかつての王道のプログラミングであったように思います。バッハでは緩楽章では誰よりもゆったりと歌っていて、ここまでやるのはなかなか難しいでしょう。フーガは快速ですが、全ての音を鳴らしきる圧巻の演奏。最後のアレグロはオーバースピード感ありますが、やはり山下はこうでなくちゃと思います。

会場には、来年5月にはのと同じテデスコのゴヤの24のカプリス全曲演奏会が予定されているという告知がありました。現代ギターにイタリアで弾いた記事を見かけて、日本でもやってくれないかなあと思っていました。
これからまた山下さんの演奏を聴く機会が増えそうで嬉しい限りです。

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2017.10.28

Toshi Onizuka Japan Tour 2017 神保町楽屋

20171011rakuya10月11日に神保町の楽屋で行われたToshi Onizukaのライブに行きました。
昨年に引き続き、フットペダルによるパーカッションをたずさえての演奏を披露してくれました。
ループマシンを駆使した一人マルチプレイの伴奏に乗せて、相変わらずの切れの良いテクニックと歌ごごろあふれる演奏でした。後半では、ループマシンによる伴奏なしの完全なソロも交えることで、さらに音楽の幅が広がった印象になり、充実したライブになりました。

鬼塚さんのご厚意で、2曲を公開させていただけることになりました。
1つ目は後半の1曲目、オリジナルのTú Lo Sabiasです。美しいバラードです。

もう一つは鬼塚テイストに料理したマイケル・ジャクソンのヒューマンネイチャー。オリジナルよりファンキーかも。

今回の東京でのライブはこれ1回でしたが、郡山北九州金沢大阪にも活動が広がり、日本中にファンが増えつつあるようで、喜ばしい限りです。

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